「なっ…な――」

唇を手の甲でゴシゴシ擦る。

うまく頭が働かない。

え。え?


あたしは今、この先生に何された?


夢?

けれど、唇の感触はしっかりと残っている。



顔を真っ赤にして、口をぱくぱくさせていると、先生は顔色一つ変えず言った。


「日比野さん、知ってます?教師とキスなんかしちゃいけないんですよ」

「あ――あんたがやってきたんでしょっ!?」

「そうですね」

「なんなのよあんたっ」

「ですから、」



「日比野さんと僕がキスしたら、
 

日比野さんは僕と

あの生徒がキスしていたこと、


他の人に言えないでしょう?」



「な――」


つまり、


つまり、


口止めってわけですか!!

先生とあたしがキスすれば、あたしもあの女子生徒と同じだから、誰かに言ったりできないと。

そういうことですか。


ようやく合点がいった、けど、


「ふざけんな――っ!」

大音量で叫んだ。

それはもう、力の限り。