何度も読み返した用紙は、文字が読めるか読めないかくらいにボロボロになっていた




「何度も読み返しては、捨ててしまおうと思った…けど」




「捨てられなかった、のね?」




日村さんが康弘の腕にしがみつきながら、話した




「そう、その通りなんだ…」




「でも、そんなにボロボロになるまで捨てられなかったコンクール用紙を持っているのに、何で?」




日村さんが泣くときは、いつも誰かのため。今の涙は、俺のためを思ってくれているのだと思う




爽は本当にいい友達に恵まれているなとつくづく思う。けど…




「仕事がいやになって辞めたわけじゃない。写真を撮るのがいやなんだ…」




俺は2人に顔を見せまいとうつむいた




「なんでだよっ!!お前、いつもいつもカメラカメラ、写真写真って言ってたじゃねぇかよ!!」




再び俺の胸倉を掴み、上下に振られる




「お前、なんでだよ!!!」




日村さんは必死に引きはがそうとしているが、女の人の力はたかが知れてる




康弘の何でだよは何回目だろうか…。冷静に話そうと思っていたのだが、康弘の興奮した様子に俺もだんだん頭に血が上り初めてきた




俺は抑え切れず、吐き出してしまった




「写真を撮るのが怖いんだよ!!!!!」