家の前まで来ると、息を整える。
その時に、やっといい匂いがしている事に気がついた。
余りに夢中で分からなかった。
「あ、狼さん!」
全く心配ないのでは、と悟り始めた時、あの子の声が後ろから聞こえてくる。
振り返ると、手に少し大きめのバスケットを持ったあの子がいた。
「どうかしたの?お腹空いた?」
思わず吹き出した。
心配で来てみれば何もないし、おまけにお腹空いたとか思われてるし。
「ま、まさかお腹空き過ぎてワライタケ食べちゃったの!?」
「ふはっ………違うから」
本気で心配してるから、逆に面白い。
自分もさっきまで本気で心配してたから、人の事言えないけど。
「で、君は何してんの?」
いい匂いするけど、と言えば、彼女はハッとして急に慌て出した。
「大変!火、掛けっ放しだっ」
質問に答える事なく、彼女は家へ入ってしまった。
このまま帰るのも変だから、俺も後に続く。


