「魔王様!」



カツカツと薄暗い空間から足音が聞こえる、大理石と革の靴が奏でる音には気も止めないで男が足早に過ぎ去っていく。

長く結ばれた白銀の髪を揺らし、僅かに焦燥を滲ませ、男は歩いた。


彼は探しているのだ。

己が仕えるべき尊き存在を、闇を支配し、闇に生きる運命の、あの少女を。



「メリエル様!」



―――どこに行かれたのだろう、玉座にはいなかった、お部屋にも、地下室にも、どこにもお姿は見えなかった。

逃げることはないことは確信しているが、姿が見えないというのは不安だ。


…もしや迷っているのだろうか、いくら長年住まわれているとはいえこの城は広く複雑にまるで侵入者を拒むようにできている。



もし迷っていたら…泣いているかもしれない、不安で闇に怯えてしまうかもしれない、―――光に恋い焦がれてしまうかもしれない。


―――嫌だそれだけは、絶対に、赦さない、私を置いて行くなんて、離れるなんて、絶対に、嫌だ。




「メル様!」










「ここよウィル」