そういえば――。

彼がどこで降りるのか、私は知らない。


このまま終点まで行ってしまってもいいのかな。

終点まではあと四駅。

たとえ途中の駅を乗り過ごしたとしても、大した距離ではないけれど。


いっそのこと、終点がもっともっと遠ければいいのに。

直後、そんなことを考えている自分に驚いた。


こんな風に気安く肩を貸してしまうことが全然嫌じゃなくて。

むしろ嬉しいとさえ感じてしまう相手なのに、私は彼のことを何も知らない。


そんなこと最初から分かっていたはずなのに、今さら心臓がちくりと痛んだ。