慌てて勢いよく立ち上がったその瞬間、膝の上の鞄と文庫本が重そうな音を立て、目の前に立つ彼の足の上に落ちた。


「痛っ」

「わあっ、ごめんなさいっ!」


おろおろとする私に、彼は「へーきへーき」と、のんびり答えて私の鞄を拾い上げた。


「重っ。この中何入ってんの?」

「教科書とか…試験前だから、一応」


「あー…そういう時期だよな。やなこと思い出した。めんどくせー…」

彼はため息をつきながら、私に鞄を渡してくれた。


「ありが…」

お礼を言いかけたそのとき、私の言葉をさえぎるように、目の前の扉が音を立てて閉まった。


私が呆然としていると、彼は俯いたまま、声を出さずに笑っていた。


鈍い子、とか思われたのかな…。