きみ、ふわり。



 とそこへ、俺の良く知る女が乱入。

 血相変えてやって来て、彼女の腕をクイと掴み上げ、引っ張りながら数歩移動。
 俺との距離が少しだけ開いた。


「サエちゃん、違うって。
 まず、どこか人気のないとこに瀬那(セナ)くんを連れ込んで、それからだって」

「あ、そうでした!
 どうしましょう~、せんぱぁ~い」

 『サエちゃん』は見ていて可哀想になるぐらいの動揺っぷりで、助っ人(?)に泣きついた。


 声を潜めてはいるが、全部俺んとこに筒抜け。

 それに、『人気のないとこに連れ込む』って何だよ?
 俺、女子に――しかも後輩にヤラれちゃうんでしょうか?


 俺は歩を進めて距離を詰め、密談中の女子二人を見下ろした。
 俺のシルエットが女子二人の顔に影を作り、彼女たちは恐る恐る俺を見上げる。