紗恵…… 忘れない、忘れる訳がない。 甘くて、優しくて、愛しくて、切なくて、残酷なほど幸せな記憶。 けど俺は。 寂しげに俯く栗重を見て、胸の奥にキュッと絞られるような感覚。 と同時にそこから熱いものが込み上げてきて。 この気持ちは多分、俺が忘れていたものだ。 もしかしたら、無意識的に封印してきたものかも。 それが栗重に再開したことによって、鮮明に蘇った。 もう一度―― 誰かのことを、 ジリジリと焦がれるほど愛したい。