辞典を受け取り、教室に入ろうとしたら、 「あのっ!久保田先輩」 彼女に呼び止められ、足を止めて彼女の方を向いた。 「ん?何?」 「私っ!伊藤玲花って言います」 そう言われて、初めて彼女の名前も知らなかったことに気が付いた。 こうやって、彼女が自己紹介をしたのだから、名前くらい言っておかないと失礼なような気がして、 「あっ、私は、久保田」 「あずさ先輩ですよね」 最後まで言う前に彼女がにっこりと笑って聞く。