銀子は“緑色の白石君……だったよね”と心の中で確かめて
「白石君…でしたよね」
と言いながら緑色の名刺を出しました。




「拓郎です」




「えっ」




「拓郎って呼んでくれますか? 持田さんに悪いですか?」




拓郎は微笑みながら何気ない風を装って、ジッと銀子の表情を確かめます。




「? 店長さんも白石君も、そんな事ばっかり……」




「拓郎、……ダメですか?」




何でそう呼んでほしいんだろ? と不思議に思う銀子でした。




拓郎にアプローチされている事にも気付かない鈍感な銀子です。




素直で正直で鈍感……、この性格で近づいて来た男性の心を何度か折っている事にも気づいていないのでした。