メイク道具を片付け終えたチカ…。



さすがに疲れを見せ、倒れ込む様に椅子に座った。




時計を見ると午前4時半を過ぎている。




『ケン君は眠くないんですか?』


「うん。いつもなら、まだ仕事だから…。」


『こんな時間まで大変ですね…。ふぁ〜ぁ…。』




一体、いつ寝ているんだろう?




『そぅいえば、どこでメイクを習ったんですか?』


「2年前までニューヨークに居て、そこでメイクを学んだ。」


『ニューヨークか…。何かすごいなぁ。住む世界が違うって感じ…。』


「華やかな世界を想像してるみたいだけど、その想像とは真逆な生活をしていた。」


『どんな生活ですか?』


「アシスタントの頃は給料が月$300(日本円で¥30000)だったから飯なんてろくに食えなかった。1番やばい時は塩と水で空腹を満たす毎日…。」


『よく生きて帰って来れましたね…。』



「自分でもそう思うよ。本当に生きるか死ぬかのドン底生活をしてた。」


『すごいですね…。でも、どうしてニューヨークだったんですか?』


「尊敬するメイクアップアーティストがいてさ…。」




その人の元で弟子として働いていた。



最初の数ヵ月は荷物持ちや片付けをするアシスタント…。



美容師と同様にチェックがあって、合格すると上の段階へ進める。




俺がモデルに触れるのを許されたのはニューヨークへ渡ってから3ヵ月が経った頃だった。



やっとの思いで全てのチェックに合格…。



メイクアップアーティストとしてデビューした。