月の骨




『お約束いただいてますでしょうか?』

「いえ。アポなしです。ですが、渡辺が来たと伝えていただければわかりますので。」

『はあ…。』

 インターホン越しに、彼女の訝しげな様子が伝わってきた。しかし、すぐにお待ちくださいと言い、スピーカーが切られた。


 大丈夫。

 斎藤は必ず僕と会う。

 斎藤と話をして、僕は今後の身の振り方を考えるつもりだった。

 つまり、山城の誘いに乗って、仕事に戻るかどうか。