私はその声にハッとして顔を上げた



目の前には電柱


「わ!!」


後ろを振り向くとそこには私の手を引っ張っている浬世也が立っていた



浬世也は朝からニコニコ顔で私に話しかける



「何、ボーッとしてんの?ぶつかったら、その低い鼻がもっと低くなるぞ?」



私はその憎まれ口に対抗する言葉を今日は持ち合わせていなくて、力なく笑って見せた



「おはよぉ…」


「!?」


言い返してこない私に目を見開いて驚く浬世也



ああ…そのマヌケな顔、癒されるわぁ



「菜々子…?」



ああ…でも浬世也にあまり甘える訳にはいかないのよね



昨日の斗真くんの態度から察するに



やっぱり浬世也のことをメチャクチャ気にしてる



でも家に入れないなんてことは無理だよね〜…



そんなことをボーッと考えていた私の顔を、浬世也は心配そうな顔で覗き込んでいた