私は資料室の扉を開けて、なかへ入る。

机の下へ潜り込んで、壁を押した。

…いつもお世話になっている資料室だから、今度掃除を申し出てみようかな。

いつも、ありがとうございますって。

大切な人に会わせてくれて、どうもありがとうって。


銀色の通路を四つん這いになって通るのも、行き止まりの壁を押すのも。

全ては、彼に会うために。


ガラン、と壁が床に転がった。

冬の冷たい空気が、空き教室を包んでいる。

私ははやる気持ちを抑えて、口を開いた。


「……純くーん……」


いる、かな。

床に足をつけて、奥を見る。

大好きなその姿が見えなくて、不安になった。

けれど少し歩くと、机に寄りかかって眠る彼の姿が目に映った。