「待てこらぁぁあっ!」


大和に対して、こんなに声を荒げたこと、果たして今まであっただろうか。

たぶん、人生のなかでここまで滑稽な追いかけっこをするのも、これきりだと思う。


段々と、大和の背中が近くなっていく。

「…っもう、なんで逃げるのっ、大和!」

背中に向かって叫ぶと、大和は「もう僕と話さないほうがいいでしょ!」と言った。

な、なにそれ!?

なんなの、まさか金輪際一言も言葉を交わさないでいる気なの!?


「ばかー!なに考えてんの!私はねえ、別に噂なんかどうでもいいんだから!」

「僕は、どうでもよくない!」

「こっ、こんな噂で、大和と話せなくなるなんて、嫌!ぜっったいイヤー!!」

本館のひと気のない廊下を走り回って、また渡り廊下を走って教室のない別館東棟へ。