…ああ、行ってしまう。
違うんだ、言いたいことが、あるんだ。
優しい笑みを、くれる君に。
大好きな君に、伝えなきゃいけないことがあるんだ。
「待って……!」
純くんが、驚いた顔で振り返る。
私はあわあわと動く口に任せて、勢いよく言葉を放った。
「じゅっ…純くんにお話があって、来たの…!いい今、お時間ありますかぁ!」
顔が、火を吹く勢いで熱く感じるようで、けれど冷や汗まで出ているような気もする。
喉の奥が詰まって、うまく息ができない。
純くんは、「…うん」と言いながら、ぽかんと私を見つめていた。
けれど、彼の次の言葉を待つ余裕のない私は、口からどうにか伝えたいことを零すので精一杯だった。



