「なんか、入りづらくて」

「いいよ。気遣ってくれてありがと」

優しい微笑みを浮かべる佐伯くんは、やっぱり中学の頃とかわんないけど、王子様って呼ばれるのはわかる。

水野くんが、ちょっとチャラいかんじの王子なら。

佐伯くんは、優しくてほのぼのした、紳士で誠実な王子様。


「…話、聞こえた?」


ぼうっと色葉の寝顔を見ていたら、声をかけられた。

見ると、佐伯くんは感情の読み取れない穏やかな笑みで、色葉を見ている。

あたしは静かに、「聞こえた」と返した。

「…そっか」

…うちの学校の王子様は、なにを考えてるのかわからない。

ふたりとも、それぞれ違った笑みで、綺麗に感情を隠す。

もう一度佐伯くんを見たあと、あたしは「わかってるよ」と言った。


「…佐伯くんが思ってること、なんとなくわかってるから」


驚いたように、顔を見られる。