自然と教室へと足を動かし始めると、ミオは「あのさ」と強気な彼女にしては珍しい小さな声を出した。


「…水野くんの、ことなんだけど」


…純くんの、こと?

「裕也くんに、訊いたの。水野くんのこと。ほら、仲いいじゃない、あの辺」

私が頷くと、ミオは元気のない目で、前を向く。

教室への道のりが、長く感じた。

「水野くんのことを好きな女子が、友達にいるんだけど、って。いっぱいいるだろーな、って笑われたんだけどね」

…せっかくの、裕也くんとの時間なのに。

私のために、訊いてくれたんだね。

「…うん」

「どんなひとなのかな、って訊いたら、いい奴だよ、って」

…返ってきた返事は、いいもののはずなのに。

ミオの顔は、曇っている。


「けど…、恋愛に関しては、あんまいいほうじゃないって」


…そんな顔、しないで。

自分のことじゃないのに、ミオは切なそうな顔をしてくれる。