「…噂は、あくまで噂だよ。他の誰になんて言われよーが、そのひとが大切なら、そのひとをちゃんと見ないと」

「……うん」


傷つけたくない。

もう、あのときのように、大和を傷つけたくない。

大和の気持ちはわからないし、大和は何も言わないんだから、私も何も聞いちゃいけない。

「…ありがとう。頑張る。噂なんて、気にしないようにする」

純くんの目を見て言う。

今度は、しっかりとした強さで。

明るさを取り戻した私に、純くんはにっこりと笑ってくれた。

「ん。月並みな言葉かもしんないけど、気にすんな」

「ううん、ありがとう。話して、スッキリした。ずっともやもやしてたから」


誰かに話すことが、必要だったのかもしれない。

『気にしちゃダメだ』って、誰かに言ってもらいたかったのかも。

純くんが通りかかってくれて、よかった。


「何事もポジディブがいちばんだよねっ」

そう言って、お弁当のおかずを頬張る私に、純くんは笑いながら「そーだね」と言った。