「ママ!」

男の子が、ぱあっと笑顔になる。

…あ。

この女のひと、男の子のお母さんだ。


「京介っ……よかった…」


お母さんは男の子の前に駆け寄ると、男の子をぎゅ、と抱きしめた。

男の子も、涙を流してすがりつく。

…よかった。

男の子の名前は、きょうすけくん、っていうんだね。


女のひとは、横にいた私達に気づくと、ぺこ、と頭を下げた。


「…ありがとうございます…見ていて下さったんですね。途中で人ごみにはぐれてしまって」

「あ、いえ…探しに行こうかと思ってたんです。よかった」


お母さんは、男の子の手をしっかり掴むと、男の子の横に揺れる風船に気付いた。