なにも言えなかった。

情けなかった。

大和にあんな顔させてしまった。

苦しくて苦しくて、部屋で泣いた。

ごめん、と何度も繰り返して。




「ーーー………色葉?」


はっ、と、気づくと、大和が私を訝しげに見ている。


「…………泣いてんの?」


心配そうな瞳に、慌てて違うよ、と言った。


「ごめん、ボーッとしてた」


「多いねー、色葉は」


大和は笑っている。

笑いあえる今に、ほっとする。


「じゃあ、また明日学校でね」


「うん。今日はいろいろありがとう。バイバイ」


「バイバイ」


そして、あの時とは違う方向へ大和は去っていく。