――― ガタンッッ!!


夏の夜風にあたりながらテスト勉強をしていたら、隣からやけに大きな物音が聞こえた。


「なんだろうね、今の音」


「松田さんの部屋からだと思うよ」


寝室でお姉ちゃんとこんな話をしている。


「珍しいね、陽斗くんがこんな夜中に音をたてるなんて」


普段から静かな松田さんの部屋からは似つかわしくない音だったので、気になってしまう。


「紗雪ー、見てきてよ」


「えーっ、こんな時間に行ったら迷惑だよ」


「でも陽斗くんは一人暮らしだから困っていたら大変かもよー?」


「あたしなんかが行かなくたって、松田さんには“彼女”くらいいるでしょ?」


「陽斗くん、今はフリーよ?」


えっ、松田さんって彼女いないの?

あんなに良い人なのに。


なら、こんな日付が変わりそうな時間に行っても大丈夫かな?

最近、松田さんとはすれ違い生活ばかりだったせいか全く会ってない。

時々玄関の開閉音が聞こえたくらいで最後に松田さんの声を聞いたのはいつだろう。