「陽人さんや、大事な人の為に未来を変えるんでしょ?」
未空の声が震えている事に気づいたが、心晴は彼女に視線をあわせようとしない。
「命を賭けて戦うって、言ってたよね?
嘘、だったの?」
言葉が心晴の心に突き刺さる。
「ッ...、いんだよ、」
「え?」
「怖いんだよ!どうしようもなく、怖いんだ!
命を賭けて戦うって言ったって、俺1人じゃ何もできない。」
「心晴君は、1人じゃないよ。」
「俺は1人だ。」
「なんで、そんな事言うの!」
未空は心晴の服をぎゅっと掴んだ。
険悪なムードの2人を見て、小学生二人はぽかんとしている。
「心晴君は1人じゃない!私も、慧さんもいる!3人で頑張ればきっとどうにかなるよ!」
「俺は、未空や慧と住む世界が違う。」
心晴の顔が、歪む。
涙が瞳に溜まっていく。
そんな彼を見て、未空はぎゅっと抱きしめた。
心晴の肩が震えているのに気づき、抱きしめる腕に力を込める。
「住む世界が違ったって、私はずっと心晴君の隣にいる。
だから、1人じゃないよ。」
「...俺に、何も話してくれないくせに。」
「そんなことッ、」
今の彼にとって、未空の優しさは辛いだけだった。
未空を自分から無理やり離すと、涙を流しながら彼女を睨む。
「...たろう。」
ずっと、やり取りを見ていた幼い心晴が心晴を見上げた。
「喧嘩は駄目だよ。」
純粋な瞳で、自分を射抜く。
なんだか情けなく思えてきた。


