なんとか和解したのを見て、慧はほっと息をはいた。

「慧さん、もう警備員の方を解放してあげてもいいんじゃないですか?」

何時までも解放する気を見せない慧に言えば、彼は首を横に振る。

「まだ、必要だから無理。」

「貴様、あとで覚えておけよ!!」

警備員の怒声を無視して、彼は歩き始めた。

自然と警備員は転びそうになる。

「...早く解放してやってくれないか。」

見かねた友哉が言えば、ハァと大きなため息をついて視線をむけた。

「どうせ、門倉さんの部下が警察に連絡してるだろ。」

たしかに、してないとは言い切れない。

「警察が来る可能性が高い以上、まだ解放するわけにはいかない。

作業中に警察に突撃されたら困るからなー。

人質が居たほうが迂闊に手だせないだろ。」

納得せざるおえない理由に、全員が黙り込んだ。

研究所内に入ると、作業をしていた者達の視線がこちらに注がれる。

「社長!」

「全員、さっさと外に出ろ。でねぇとコイツ等がどうなるかわかってるよな?」

悪役の台詞を低い声音で吐く慧を見て、未空は驚くしかできない。

慧は警備員にナイフを突き立てて脅すと、社員達は戸惑いながらも外へ出ていく。

友哉は深いため息をついて頭を抱えた。


社員全員が外に出たのを確認したあと、出入り口をすべて閉めて中から鍵をかける。

「やっぱ古いな。」

そうつぶやきながら、慧は大きなパソコンに手をかけた。

ディスクを挿入し読み込む。

慣れた手つきでカタカタと何かを打ち込んでいる姿を見て他の3人はぽかんとした。


「...一体、何者なんだ。」

「んー、秘密。」

友哉の質問に適当にかえしてから打ち込み終えた彼はエンターキーを押した。