「何時の時代に行きたい?」
慧に問われて、心晴と未空は顔を見合わせる。
「私は、何時でもいいです。」
「俺も。」
「なら、一年前くらいでいいか。」
適当に到着地の日時を入れた瞬間だった。
ガコン!と一度激しい揺れが起こる。
「ッ、な、なんだこれ!」
景色が一瞬にして変わった。
ぐにゃりとした空間。見たこともない異様な風景に心晴は声をあげる。
未空は心晴の上着を握りしめていた。
「自動モードとは違うからな、前から目を離すなよ。」
「う、うん。」
ハンドルを握る手に力がこもる。
アクセルを踏むと、すさまじいスピードで動き出した。
「ッ!」
「あの、白い靄みたいなモンが病原体。
で、その向こうにある黒い渦巻いているものが時空の歪。」
操作でいっぱいいっぱいな心晴に、隣で慧が説明しているが
全く耳に入って来ない。
「心晴、聞いてるか?」
「この状況で聞けるわけないだろ!」
気を許すことはできない。
心晴はうまく病原体と歪を避けて前へと進む。
この調子ならすぐに操縦に慣れるだろう。
そう、慧が安心した時だった。
「け、慧!」
「ん?」
「あれ、避けきれねーよ!!」
視線を前に戻すと、見たこともないくらい大きな時空の歪が出現していた。
「ッ、心晴!来た道を戻れ!」


