慧が、少し大きめの石を投げて犬を気絶させたのだ。
「二人とも大丈夫か?」
慧の声が聞こえて、泣きそうになった。
不思議ともう大丈夫だと思ってしまう俺がいる。
「ッ、心晴君、ごめんなさい!私のせいでッ、その怪我ッ...。」
「俺は、大丈夫。未空は怪我ない?」
「うんッ、」
今にも泣きそうな未空を解放すると、立ち上がる。
慧があっというまに一通り片づけてしまった。
「今のうちに行くぞ。」
慧の言葉に頷くと、再び走り出した。
裏口をでて大通りにでると、動物達は追って来なくなった。
思わず、安心してため息をつく。
「心晴、本当に大丈夫か?」
兄貴の心配そうな声に頷く。
「結構痛いけど、ただのかすり傷だから大丈夫。」
「…良かった。」
安心したように笑う兄貴を見て、慧は口を開いた。
「…えーと、貴方まで巻き込むわけにはいかないので、そろそろ帰ってもらえませんか?」
「…慧サン?だっけ?」
「…そうだけど。」
「弟を頼みます。」
兄貴は軽く頭をさげて、そう言った。
「…うん。」
返事をした慧は、何故か泣きそうな表情をしている。
訳がわからずに首をかしげてその光景を見ていた時、
ガウ!ガウ!
再び聞こえた犬の吠える声。
慧は兄貴に背を向けて、俺と未空に 行くぞ と告げた。
俺は最後に振り向き、兄貴を見た。兄貴はひらひらと手を振っている。
「っ、兄貴!
俺、絶対未来を変えるから!」
「…おう。頑張れよ」
「兄貴もな!」


