「大丈夫だよ。」

真っ直ぐ、俺の目を見て彼女は言う。彼女は何も知らないはずだ。

なのに、知っているような言い方に違和感を覚える。


「心晴君なら、大丈夫。」


俺を安心させるには十分な言葉だった。

じわり、じわりと心が温かくなってくる。

「未空、有難う。」

目を細めて笑みを見せれば、未空は少し顔を赤くして首を横に振る。

なんとなく、未空には正直に今起きている事を話してもいいような気がした。

一人で抱え込むのが辛かったという理由もあったけど、

未空の人柄なら、きっと受け入れてくれると思う。


「...未空、俺の話...聞いてくれないか?」

「?、うん。」

頷いて、未空は俺の両手を解放した。

俺はぽつりぽつりと話し始める。

信じてもらえないかもしれない。けど、未空なら。

会ったばかりなのに、可笑しい話だと感じつつ口を開いた。


「俺、本当は死んだはずなんだ。」

「えっ!?」


信じられない、と言ったような顔を見せる。

彼女は何か聞きたそうな表情だったが、口を閉じて何も言わなかった。

俺の話を最後まで聞いてくれるらしい。


「...2012年8月20日に、俺は居たはずなんだ。

ずっと普通だったのに、急に地震が起きてさっ...、屋根、落ちたんだ。

兄貴がたすけてくれて俺はたすかったんだけど、

母さんと兄貴、俺の、目の前で。」

声が震える。

話せば話すほどこれは現実だと思い知らされる。

俺の震える手を、再び未空は握ってくれた。

「怖くて、死にたくなくてっ、外にでたら町が滅茶苦茶でわけわかんなかった。

そしたら空が光って、俺の方に何かが飛んできて...。」

何かが俺にぶつかって、俺は死んだ。