「馬鹿者。」

「社長に、言われたくっ、ねえよ。」

敬語を使うのをやめ、慧は言い返す。

もう、ここでは上司と部下という関係じゃない。

慧は よし、 と気合を入れ直し立ち上がった。

「お義父さんは、俺が助ける。」

冗談交じりでそう言えば、友哉は笑った。

「心強いよ。」


















2019年8月20日。午後12時40分。

「...。」

愛しい人は今過去に向かっている。

自分にできる事は何かないか、と考えているときだった。

体中にあった違和感がすぅ、と消えたのだ。

驚いて腕を捲れば、あったはずの痣が消えている。

「っ、」

なんで、どうして。

___、もしかして。

未空は空を見上げる。


「...心晴っ、」

 絶対、未空を救うから。

その言葉を思い出し泣きそうになった。

彼は過去の自分を救ってくれたに違いない。

ギリ、と自分の腕を強く握りしめた。

「...心晴、こんなの、嫌だよ。」

私はただ、あなたが傍にいてくれるだけでよかった。

私のかわりにあなたが傷つくなんて許せない。


(今、何所に居るの。)

一刻も早く会いたい。

ツツー、と一筋の涙が頬を伝って落ちた。