慧はぼんやりと考える。

本来なら、この場所に未空と心晴もいるはずだ。

けど、いない。

この先の運命は誰も知らないのだ。

自分で考え、行動しなければならない。


「娘は、未空はどうなった?」

友哉は力なく問いかけた。

「たぶん、無事です。過去の俺が護りぬきます。」

「...そうか。」

フ、と友哉は笑うと真っ赤な空を見上げる。

「ここが死に場所か。」

諦めたように言う友哉に慧は首を左右に振り否定した。


「まだ終わってません。」

「...峯岸?」

「俺は、社長をッ、ゴホ、げほ、」

突然咳き込んだ慧は手を口にあてた。

友哉は驚き目を見開く。

「ッ、けほ、ごほ、」

「峯岸、お前ッ...、」

じわり、と腕が痛んだ。

「だ、じょうぶです。」

ハァ、はぁ、と辛そうに呼吸を繰り返す。

なんとか落ち着いた慧はその場にしゃがみこんだ。

彼の腕には不気味な痣が広がっている。

「病原体に触れたのか。」

「...。」

友哉は慧の腕を引き、袖を無理やり捲った。

「進行速度が、早い。もしかして取り込んだのか!?」

「...そうでもしなきゃ、未空を救えない。」

慧が呟いた。