埃っぽい臭いが鼻を掠める。



天井近くまである棚の隙間を少女はキョロキョロとしながら歩いて行く。



如月はその様子を見ながら“まるで路地裏の猫みたいだ”と思った。



背の低い彼女が更に低く感じる…そんな錯覚にちょっと笑えた。



「如月。」



「へっ!?あ、はい。」



突然名前を呼ばれて彼は少し驚いて彼女を見た。



「過去の未解決事件のファイルは何処だ?」



「あぁ、その後ろの棚。古い順に並んでるだろ?」



黒髪を揺らして振り返ると大きな瞳が棚を見上げる。



如月は本棚に寄り掛かりながら「なぁ、JOKER…」と呟くように喋り掛けた。



「俺、お前の事面白いとか気持ち悪いとか…そんな風に思ってないよ?」



彼女はチラッと如月を見て「そうか」と呟くとまた棚に視線を戻した。