「ああああ!!
あんなとこに未確認生物、チュパカブラが!!」

美佳の背後を指差した。

「えぇえ!!」

美佳が驚いて振り返っている隙に、俺は彼女の腕から逃れると、ガラスの扉を押し開けて駆け出した

ちなみにチュパカブラとは90年代に南米で目撃者が急増した、ヤギの血を吸う、赤い目の変な生物だ。

今や話題にのぼることもない、下火のUMAである。


しかし

こんな見え透いた手にあっさりひっかかるとは。

あいつもヤスと負けず劣らずの阿保だな。

……気の毒に。



緑の葉をつけた、桜の並木を走り抜ける。


50メートルほど先に、校門を曲がっていく、森口の後ろ姿が見えた。


ドクンと心臓が高鳴る。

一秒でも早く追いつきたい衝動に駆られて


俺は走るスピードを上げた。


何故かなんて、解らない。


理由なんて見当たらない。


大体

あんなダサい女に惚れるなんて俺のプライドが許さない。

許せないけど。