― 部活かぁ…どこにしよう… ―


運動が苦手な百合華は、演劇部に決めちゃおうかなどと思いながらも、
なんとなく下駄箱に向かい、
靴に履き替えて、
校庭へと出た。


夕焼けの中、

部活に励む生徒たちの声が響いている。


吹奏楽の音も聞こえてきたりして…



気がつくと、

百合華は、

野球部練習の見える、
グランド近くにまで来ていた。


威勢の良い声が響いている。




― あっ… ―



金網ごしに野球部の練習を見ている
一人の男子がいた。



佇み、じっと見ている。



― 矢崎くんだ… ―




「あれっ?

玲くんっ」


一人の女子が、

矢崎に声をかけて歩み寄ってきた。


矢崎は振り返り、
彼女に微笑んだ。



金網ごしに並ぶ二人の後ろ姿。


少し離れたところから見ている百合華には、

二人の会話は聞こえず、

なぜか、

胸の切ない痛みを

小さく感じていた…



― ハードル高いって聞いてたけど…

…なんだか…仲良さそう… ―



百合華は、

そっと静かに

その場を去っていった…