それなのに。
耳元で「………教えない。」って囁く梅田さん。ずるくない?
その時だった。
突然。教室のドアが一気に開いた。
「鈴ちゃん!!!」
「鈴!ウメ先生と何やってるんだよ~」
どうやら、お勉強会が終わった子ども達が続々と帰ってきたらしい。
張り詰めていた空気が一気に緩んだ。
「鈴ちゃん、鈴ちゃん。お話があるの。」
と、多実ちゃんは私の袖をひっぱる。
「どうしたの?」
私はしゃがんで多実ちゃんの声に耳を傾けた。
「梅田センセーにはフィアンセがいるの。将来結婚の約束をシタトカ?だから鈴ちゃんとはケッコンできないの。」
教室内は子ども達の声で騒がしくなっていたけど。
私には多実ちゃんの言葉しか聞こえなかった。
衝撃的すぎて。
「ふぃあんせ?」
ああ、何だかめまいがしてきた。
彼女いるのにあんなにチャラいなんて。
お隣さんには用心しないと…
好きにならない。
絶対に。
そう誓ったのに…
後から思えば私の恋は既に始まっていたのかもしれない。


