明らかに感じる右足の違和感。
どうやら私は踏んではいけないものを踏んでしまったようで。
「ご、ごめんなさい………!」
「お前…俺の携帯…どうしてくれんの?」
ワントーン低くなった声が頭上から降ってきて。いや、怒るのは当然だけれども。
徐々に手すりの方に追いやられ、
手すりを背にする形になってしまった私。
不気味な感じがする。午前中の爽やかなお隣さんは何処にー!?
こんなに、追いつめなくても…。
「ねぇ、どうしてくれるの?」
と、次第に顔まで近づいてきて。
「ごめ…んなさ…弁償し…」
ビュゥッ………
再び突風に襲われ、私は手すりをギュッと強く掴み咄嗟に目を閉じる。
その時
心臓が飛び出るくらいに驚いたのは、突風のせいなんかじゃなくて。
唇に何かが触れる感触があったから。


