亡國の孤城 『心の色』(外伝)



無意識で瞬きを繰り返す中、目の前の大臣は顔を上げぬまま…無感情な言葉を並べていく。

「長きに渡る会議の末…昨日、元老院らの後押しもあり、ようやく決まりました次第で御座います」

「次期国王、フェンネル王五三世は…クロエ様、貴方様に御座います。お祝い申し上げます、陛下」

「つきましては肝心の戴冠式で御座いますが、本来ならば厳粛に取り計らわねばならない式も、これ以上の国王不在の間を空けるわけにはいきませぬので、早々に行いたき所存に御座います」

「他の大臣達や元老院など、重役の了承は既に得ております。あとはクロエ様御自身の御決断のみに御座います故…」
















彼の言葉は一言一句、頭に入っていた筈なのに。 ガラスの無い窓枠みたいに、その風を少しも妨げる事が出来なくて。

それでも、ぼんやりとした感覚の中で要点だけは理解出来ていた自分を、いつか思い出したら褒めてやりたいと思う。

そして私は、ようやく顔を上げてくれた大臣に向かって、笑みを浮かべるのだ。
その笑顔には何かが含まれていたと思うのだけれど、正直自分でもよく分からない。
ただ、喜びや楽しさ、面白さとか…笑みとなって表面に出るそれらとは。
多分、だいぶ違うものだったに違いない。










さあ、クロエ。

もう以前の様に笑っている暇など無い。

掃除も、縫い物も、好きなことはほとんど出来なくなるけれど。





彼女の代わりに、重荷を背負う事が出来る。

彼女にしばしの安堵を届けることが出来る。

私は、少しは、彼女を救うことが出来る。



















「―――有り難き幸せです、大臣」




















了承の意を伝えれば、大臣の顔が綻ぶ。





さあ、クロエ。
やっと役に立てるじゃないか。













しかし、クロエ。











嬉しいはずなのに、何故か感じるこの虚無感は、何なのかな。