亡國の孤城 『心の色』(外伝)


一歩後ろからついて来る召使の声は、やはり何処か暗い。
カツン、カツン…と階段を叩く軽い靴音が、やけに大きく響き渡った。

「………それで?」

「はい……お身体には問題は無いのです。…問題があるのは………カルレット様ご自身の…方でして…」

「………塞ぎ込んでいる…そういうことだね?」

「………はい」






52世が崩御されてからというもの、カルレットはずっと自室に閉じこもってしまっていた。
酷い悪政を行ってきたがために狂王だの何だのと非難され、恐れられていた52世ではあったが、カルレットにとっては実の父親だったのだ。
狂王と呼ばれる様になる前までは、とても仲の良い親子だったとも聞いている。


フェンネル王52世は、国を、民を、そして娘を愛する立派なお人だったのだ。
何が彼を狂わせたのか、それは未だに謎のままだが…それ以前に、彼は確かに一人の父親だった。


肉親であるカルレットの悲しみを理解する者は、ほとんどいないだろう。
クロエとて、それを完全に理解するのは難しい。…だが、本の少しでもいいから…彼女の重荷を背負ってあげられるのならば。



「……カルレットは、昼食はもう済ませたのかな?」

「いえ、これからですが………多分、お召しにならないかと…」

「………私が持って行くよ。部屋の前まで運んでおいてくれ」




















胃が受け付けてくれないのか、カルレットはここ最近まともに食事をとっていなかった。

国王不在の中で行わなければならない国政。毎日毎日開かれる大会議の忙しさに追われ、夫婦だけの時間が取れないでいた事を、クロエは今更ながら後悔していた。


こんな時に、どうして自分は彼女の傍にいてやれなかったのだろうか。
娘達も、忙しいクロエを気遣ってか、口には出さないが母を酷く心配しているらしい。







―――…お母様ね、独りの時………なんだか泣いているみたいなの。
















召使を通して間接的に聞いたエルシアの言葉が、チクリと胸に刺さった。