僕は、それが誰だかすぐにわかった。


そして、面倒なところを目撃された、と思った。


「おう」


親父はわざわざ窓を開け、トラックを止めた。


「こちらさんは、え、まさか、これか?」


彼女をちらちらと見ながら、小指を立てる。


「違うよ」


「んだよ、別に照れるこたぁねぇじゃねぇか。なあ、お嬢ちゃん」


「うるさいな。放っとけよ、もう」


「親に向かって、うるさいとはなんだ」


「もう、いいから、ほんと、構わないでくれ」


「ちっ。ったくよ。偉そうな口きいてねぇで、暗くなる前にちゃんと家まで送り届けてやれよ」


それだけ言い残すと、親父はクラクションを鳴らし、家の方へ走っていった。