「どうぞ」


僕は自動販売機で缶コーヒーを二人分買って、一つを彼女に差し出した。


「ありがとう」


笑顔を見せた彼女の目は、まだ少し腫れている。


橋の欄干にもたれながら、缶コーヒーを一口飲んだ。


川のせせらぎがやけに大きく聞こえる。


「さっきは、その……ごめんなさい。寄りかかってしまって」


「いえ」


「……旦那さんは、わたしをかばって亡くなったんです」


彼女は目を伏せたまま、ぽつりと言った。


「そうだったんですか」


「わたしだけが、助かってしまって。旦那さんに申し訳なくて」


彼女は、缶コーヒーを握りしめた。


その時だった。


向こうからやってきた傷だらけのトラックが、クラクションを鳴らした。