「あ、そうだ。麻友。そろそろ水泳の授業だよね?」

「あ・・・うん」

 夏が近づいてきて、体育の授業は水泳へと切り替わった。

 水の中は気持ちいから、私はプールの中が大好きだ。

 だから、水泳の授業がすっごく楽しみだった。


「ふ・・・ん。麻友さ、その日休んでよ。授業」

「あぁ・・・はいはい。・・・・・・って、えぇぇ!?」

 私は、驚いてガバっと立ち上がったせいで、頭を仲谷くんのアゴにぶつけた。

 仲谷くんはアゴをおさえて、すごく痛そうにしている。


 いや、でも、えぇぇ!?


「なな、何で!?」

「ん。だって水着姿じゃん? 他の男に見せたくない」

「でで、でもぉ!?」

 それはキツイっすよ仲谷さん!

「何、反抗すんの?」

 制服のネクタイをキュっとひっぱられて、私は前のめりになった。

 下から見上げた仲谷くんの顔は、少し恐い表情。

 私の頬を汗が伝った。


「でも、水泳は・・・楽しみにしてたし」

 さすがに、その束縛だけは。

 聞けないの。


「ふん・・・。ま、いいや」

「へ?」

 案外簡単に許しが出た。

 あら、いつもならもっとしつこいのに。

 で、最終的に私が折れるのに。


 今日は、どういう風の吹き回し?


「水泳の許可は出すよ。だから、麻友は水泳の授業の時。オレに意見しちゃダメだよ?」

 意味深な言葉を私につげて、仲谷くんは立ち上がった。

「え!? ど、どういう意味!?」

「時がきたら分かるよ」

 ニヤリと不適な笑みを浮かべて、仲谷くんは生徒会室を出て行った。