「いいの? 彼女さんにヤキモチ焼かれるよー?」
「そんくらい平気だろ。寛容なんで、オレの彼女」
「自慢?」
「うん」
「幸せそうなことで」
「幸せだよー」
そうやってノロける向井くん。
幸せそうでなにより。
「向井くん、背景手伝うけど、どこ塗ればいい? ていうか、向井くん役者じゃ・・・」
「今は継母とかのシーンだから王子は不要。じゃ、これオレと手伝って」
「・・・うん」
下書きのされた大きな紙、半分くらい塗ってあるけど白紙の箇所もある。
それを、私と向井くんは塗っていく。
ほかの人は舞踏会の背景で手一杯らしい。
なので2人っきりとなっている。
「・・・・・・」
さっきは普通にしゃべってたけど、考えたらフった人とフラれた人って関係だよね・・・。
それを確認すると、会話が減ってしまう。
でも、この人はもう由梨にゾッコンなわけで。
そんな昔のことを引っ張り出すこともないね。
「ねぇ、向井くん。由梨のこと・・・大切にしてあげてね」
「え!?・・・あ、はい」
「なんで驚くの」
「開口一番でいきなりそれかぁ・・・て」
「そうだね」
「まぁ、大切にするよ。好きだし」
恥ずかしげもなくそう言うから、こっちが照れてしまう。
向井くんも、浩貴も、ストレートすぎるだろう。

