「仲谷くん・・・」

「ん?」

 生徒会室のソファに座って、ぷるぷるとスカートのはしをつかむ。

 そして、ギュっと握って緊張を隠すようにする。

「どうした?」

 どこから持ってきたのか、マグカップに入ったココアを私に差し出す。

 生徒会室をぐるっと見渡すと、奥にレンジやポット等がそろった台所っぽいものが見えた。

 何でもアリだな、生徒会って。


 私は、差し出されたココアをぐいっと飲む。

 温かくて、甘い。


「あ、あのね」

 ひろ・・・、浩貴。

 浩貴、浩貴、浩貴。


 ノイローゼになるくらいずっと、頭の中で浩貴を連呼。


 大丈夫、言えるはず・・・。


「ひ、ひろ・・・・・・ひろ、ひろ・・・」

「ひろ?」

 言え、言うんだ自分!


「ひろ、き・・・」

「ん・・・?」

「ひろき・・・」

 言えた。

 ほっとした内心。


「あ、ゴメン。聞こえなかったもう1回言って」

 仲谷くんは聞き返し。

「え・・・、ひろ、き・・・・・・」

「聞こえないっての」

 嘘だ、絶対聞こえてる。

 ほら、めっちゃニヤニヤしてるもん。


 あ~・・・もぅ!



「浩貴!!!」