「上がりました・・・」

「遅いっての。何時間かかってんだよ」

 だって、キレイにしたくて。

 しかも、仲谷くんの部屋に入るまでの勇気が出なくて。

 オマケに髪乾かす時間も加わって。


「2時間かな・・・」

「バカ」

「はい・・・」

 くっ。

 返す言葉がない。


 何だ、この負け犬スタイルは。


「じゃ、ここ」

 ベッドの上をポンポンと叩かれて場所指定。

 そこにちょこんと座る。

 うん、やっぱ恥ずかしい。


 モノトーンの家具に、やたらチラチラ目がいって。

 何か、落ち着かない。


「あの、私・・・何か飲もうかな・・・」

 立ち上がろうとすると、グっと腕をつかまれる。

 振り向くと、仲谷くんの視線とぶつかった。

 あの、大好きな鋭い瞳。

 この目が大好きなんだ。


 私を呼ぶ声も。


 私を抱きしめてくれる腕も。


 温かい背中も。


 大好きでしょうがない。



 今さら、私。

 何逃げようとしちゃってるんだろ。

 
 この人ならいいって・・・思ったじゃん。

 この人と、つながりたいって思ったから。

 この場所にいるんだよね。