「・・・いいよ、オレが折れるよ。だからベッド行け」

「え?」

 布団から顔をぴょこっとのぞかせる。

 仲谷くんは呆れた顔で私を見ていた。


「でも、顔こっちむけんな」

「・・・うん」


 私はベッドに上がると、布団をかける。

 仲谷くんも電気を消すと、布団に入ってきた。


 ・・・あ、なんか少し暖かい感じがする。

 人と一緒にいるって感じ。

 誰かと一緒に寝るって、久しぶり。


 仲谷くんが動くと、布団と擦れる音がする。


 その衣擦れの音になぜか緊張してしまった。

 ドキっとなる。


「ねぇ・・・やっぱり、一緒に寝るって辛い」

「え・・・」

「背中見てるだけで、触れたくなる。だから・・・一回だけキスさせて」

 
 暗闇で声だけが響く。

 声だけが聞こえるから、妙に声が自分の中に入ってくる。


「・・・・・・どうぞ?」

 別にイヤじゃない。


 寝返りをうつ。

 振り返ると、浩貴がいる。

 当たり前のことだけど、なんだか嬉しくなった。


 動いて、衣擦れの音が大きくなった。

 暗闇になれた目は、浩貴がなんとなく分かる。


 目を閉じると、手が、頬に触れた。


 唇に、触れた。