「あーもー。おま、顔冷やしてけ」

「え?」

「顔が赤い・・・。そういう可愛い顔、オレ以外に・・・見せるなよ」

 時々ポツリと呟く言葉に、不意に胸を打たれる。


 そんなこと言わないでよ、顔赤いのなおんない。

 私は火照った顔を、さますように手でパタパタとあおぐ。


「じゃ、仲谷くん。バイバイ」

「ん、了解」

 パタンと、ドアを閉めて教室まで全力で走る。

 携帯で時間をチェックすると、授業の始まる2分前。

 けっこうギリギリだな・・・。

 
 でも、さっきまでの時間が迷惑だったとか、思ってないよ・・・。

 さっきまでの時間で、体温をもらった。

 心を、もらったよ。



 少し火照った顔に手をそえて、私は教室まで必死に走った。