「大木・・・」
顔をグイっと近づけられていて、距離が短くて。
唇の距離も、そう遠くなかった。
キスされる・・・!!!
キスは・・・キスは。
好きな人と、仲谷くんとだけ。
したいのに。
必死に抵抗するのに、力が強くてビクともしない。
いやだよ・・・助けて、仲谷くん。
パコーンッ!!!
へ・・・?
衝撃音。
何かが何かにぶつかった・・・みたいな。
気がつくと、私を抱きしめていた向井くんは地面に倒れていた。
イケメンな顔は、少し白目をむいている。
よく見ると、向井くんの隣には、転がったペットボトル。
中身は空らしい。
ラベルには、「低糖コーヒー」と表示されている。
このラベルには、見覚えがあった。
生徒会室で・・・仲谷くんが飲んでいたモノだ。
「おーい、麻友。上」
上と言われて、バっと上を向いた。
2階の窓から手を振っている人がいる。
あ・・・仲谷くんだ。
驚いて、その場にペタンと座り込んだ。

