「わざわざつけさせるとか、面倒くさいな女」

「いいじゃん。これ・・・憧れなんだから」

「まぁ誕生日だし、聞いてやるよ」

 浩貴は私の手をそっととると、丁寧に薬指に指輪を滑らせて通した。

 
「・・・泣いていい?」

「いいよ。泣け。誕生日だからな」

「誕生日関係ない・・・。なんか、すっごい嬉しくて」

 涙が自然に出る。

 思わず拭ったけど、止まる様子はなくて。


「こういうのって本当は笑うとこなんでしょ?」

「でも、お前泣くじゃん。それでいいよ」

 浩貴は私を自分の腕の中におさめると、赤ちゃんをあやすようにしてくる。

 子供扱いすんな。

 って、怒りたい。

 私は今日、17歳になったんだから。


 でも、怒れない。

 私の背中を撫でる手が優しくて。

 もっと私の涙を誘う。


「ゆび、わ・・・サイズ、ぴっ、ったりじゃん」

「ずっと握ってたから分かる。感覚で」

「こん、や、くって・・・」

「ちゃんと聞いてたのかよ。それに対してツっこんでこねぇから、聞こえてないかと思った」

「きこ、えて・・・た」

 ただ、嘘かと思って聞き流してた。


「オレの嫁になるのはイヤ?」

「いや、じゃない」

「じゃぁ、いい?」

 私はキュっと浩貴のブレザーを握った。

 私の答えなんてお見通しのくせに。


「お願いします」