「次の方ー、どうぞー」

「はい」

 観覧車に乗り込むと、観覧車はどんどん上に行く。

 当たり前のことだけど。

 
 そういえば、今日はまだ観覧車に乗ってなかったんだった。

 由梨がいざこざを起こしたので。

 
 観覧車は好き。

 ゆっくりで、景色見るのが好きだし。

 でも、今回はゆっくりできそうな気がしない。

 
 
「・・・人、少ないね」

「もう閉園時間になるしな・・・」

「てっぺんまでまだあるよね。前の由梨たちから、私たちのこと見えるかな」

「今は松竹たちのが上の位置だから、見えるだろ」

「じゃぁ、てっぺんすぎたら、私たちのとこから由梨たちが見えるね」

「あぁ・・・」

 ちょっぴり沈黙。


「なぁ・・・」

「はぃっ!」

「なんではい。なの」

「い、いや・・・」

「観覧車の一周って、意外に長いんだ」

「そうなんだ」

「3回のりゃ分かる。時間があるから・・・」

 浩貴がグっと立ち上がって、私の隣に腰を下ろした。

 少しグラついて、私は怖くなって壁に触れた。


「グラつくのは怖い?」

「少し・・・」

「じゃぁ、あんま動くなよ」

「んっ・・・」

 キスされた。

 頭をおさえられているもんだから、そう簡単に逃れられない。

 前半はいいけど、後半は酸素不足で苦しいから逃れたい。


 抗議を示すように、浩貴の背中をバンバンと叩くと、一瞬離れた。

 けど、次は深いのが来た。

 それにも抗議すると、唇は離れて、ゆっくり動いて言葉を紡ぐ。



「動くなって言っただろ。反抗するなよ」