浩貴はそう言うと、私の手をグイっと引っ張った。

 私の体は引き寄せられて、浩貴の腕の中に収まる。


「閉園までまだ時間あるだろ?」

「え・・・あー、うん。あと少しあるけど?」

 パンフレットを見ながら向井くんがそう答える。

 その瞬間も私は浩貴の腕の中にいるわけで、心臓がドキドキしていた。

 ・・・いきなりのことだったから、普通以上にドキドキしてるわけで。


 ほかに意味はなくて。


 “今じゃなきゃ許さない”


 その言葉を言ったときの、艶っぽい顔した浩貴にドキドキしてるってのもあってですねぇ。

 えーっと。。。



 ドキドキしてわからんっ!!!


「麻友、行こう。観覧車」

「え・・・でも、時間」

「埋め合わせ、してくれるんでしょ?」

 耳元でそう囁かれて、ノックアウト。

 KOだ。


 一瞬にして、力は抜けた。


「松竹と向井は、先帰っといていいぜ?」

「いや、私たちも」

「乗ろうか」


 向井くんと由梨は手をつないで、ダーっと観覧車に向かって走っていった。

 それを追いかけるように、私と浩貴も走っていく。


 夕焼けに染まりそうな空の下。


 Wデートの始まりだ。