彼氏である向井真は、もう泣きかけで私たちを見ている。
「何って・・・。せっかくパスがあるのに、乗らないのは勿体ないから・・・アトラクション乗っただけだけど?」
「何乗ったの」
「ジェットコースター5回と、ジャイアントハンマー4回と・・・あと絶叫系を適当に」
「・・・・・・」
「あと観覧車に3回」
「観覧車・・・?」
「コイツが観覧車をめちゃくちゃ揺らしてくるんだよ! 殺す気か!!!」
「オレは楽しかったけどな」
「うわぅ」
予想の斜め上をいくひどい事態が起きていたようで。
私は罪悪感を覚えた。
・・・向井くんに何かお詫びしなきゃなぁ・・・。
「で、お前らは随分満喫していたようだな・・・。耳なんかつけやがって」
「あ、あぁ・・・これね」
「オレは絶叫系乗りまくってたんだけどねー。男2人で!!」
「うっ・・・」
男2人で!・・・と強調されてしまった。
あぁ、怒ってる。かなり怒ってるよ。
「えと・・・ちゃんとそのうち、埋め合わせするので・・・」
浩貴の服の裾をつかんで、つんつんと引っ張ってそう言う。
埋め合わせって言っても・・・浩貴、予定あったりするから、いつになるか分からないけど。
でも、今日はちょっとひどいことしたかなって思うし。
もとは・・・浩貴と2人だけのデートの予定で、それがWデートになって。
けっきょく、ちゃんとしたWデートすら出来ていないし。
・・・別のWになったし。
「埋め合わせ?」
「うん・・・」
「いつ?」
「そのうち・・・?」
「やだ」
「え・・・」
「今じゃなきゃ許さない」

