「必然的だよね」
観覧車は基本2人乗りなので、まぁ必然的にこういう組み合わせである。
Wデートなのだから、必然的である。
私と浩貴の後ろに、由梨と向井くんが並ぶ。
案外人は思ってたより少なくて、早めに乗れそうだ。
・・・それにしても、しょっぱなから観覧車なんて、ずいぶんしおらしいんだよね。
・・・おかしい。
「次の人ー」
考え事をしていると、もう順番が来ていたようで。
係員の人が丁寧に誘導をしてくれる。
それに促されるように進もうとした、その時。
私の右手は後ろにすごい力で引っ張られ、誰かの腕の中におさまる。
男の子にしては、腕は細くかよわい。
・・・ということは?
「う、わっ!」
由梨は私を腕の中に収めると、グイっと向井くんの背中を押した。
向井くんはこけそうになって、前に体を傾けた。
ダン、となんとか踏ん張ってこけるのは阻止出来たもようだが、向井くんは浩貴の横に来ていたため、浩貴と一緒に観覧車に乗っけられる始末。
「ごめんね、真。でも・・・麻友とあそびたかったのー!」
由梨は私の手を引いて観覧車の列からでる。
何が起きてるのかいまいち分からない私は、されるがままだ。
少し走ったところで、由梨は足を止めた。
少し肩が上下していて、荒い息遣いが聞こえた。
「ゴメンね麻友・・・。その、私・・・麻友とあそびたくって」
「由梨・・・」
「今日だけでも、お願い!」
手を合わせて必死にたのみこむ由梨を見て、私はなんだか切なくなった。
そんなに私とあそびたかったんだ・・・・。
「うん、由梨。私も由梨と遊びたい」
「麻友!」
ぎゅーっと抱きしめられて、小さく声が出た。
ここまで感激されると・・・。
照れて少し困って、私もギューっとする。
浩貴より小さい背中だ。

